読書感想文 小林よしのり著「パール真論」(続き)

http://d.hatena.ne.jp/syachiku1/20111020/1319118436

上記感想文の続きである。

パール判決書の全文を日本語で読む場合には、「共同研究 パル判決書(上)・(下)」がある。

共同研究 パル判決書(上) (講談社学術文庫)

共同研究 パル判決書(上) (講談社学術文庫)

共同研究 パル判決書(下) (講談社学術文庫)

共同研究 パル判決書(下) (講談社学術文庫)

実は私も、無謀にもこの本を購入し読もうと試みたのである。そして上巻を半分程度読んだ時点で力尽きてしまった。読解力の無さは勿論自覚しているが、この本は難解すぎる。

小林氏もこの点に触れており、
「パール判決書を生活者が読みこなすのは無理である」(パール真論:17ページ)
そんな一般人向けに、パール真論第21章「解題 パール判決書」を掲載して頂いている。

「共同研究 パル判決書」を熟読した小林氏が全文を要約・解題した文であり、「パール真論」の3分の1弱をこの解題文が占めていると言って良いボリュームである。パル判決書を読みたいが手が届かないというような人にとっては、これ程有難い要約文は無い。パール判決書に何が書かれているのかを知りたい方には正に必読の章であると言える(勿論、しっかりと研究する学者や、そもそも小林氏が信用出来ない(自分のイデオロギーに沿った要約の仕方をしていると考える)方は、原文である「共同研究」の方を読むべきなのだろうが、私のような一般人にとっては十二分の代物である)。しかしこの難解な判決書を読破した小林氏は、それだけで尊敬出来る(お世辞抜きで本当に凄い)。

まとめ)
最初に書いているが、「パール真論」は元は中島氏との論戦により誕生したものであるが、結果的には「パール判決書」の研究書としての価値が非常に高い書物では無いだろうか?勿論小林氏の思想信条が既述されていない訳では無いが、パール判決書をその為に悪用しているような箇所は一切見当たらず、特に21章の「解題文」は中立的な観点で書かれているのが特徴的である。

また本書を通じてパール判事自身への尊敬の念が強くなった事は言うまでも無い。政治色の極めて強い東京裁判で、その方向性が「日本非難」一色に染まっているような状況下でただ一人、個人の正義を徹底して貫き、アメリカを断罪してのける勇気は並大抵のものでは無い。我々のような何のリスクも追わずに好き勝手な事を書き殴るネット右翼には、到底出来るような事では無い。また、「有色人種だから日本人に有利な判決を下した」などと非難するのは論外だが、「日本に同情してくれた」などと間違った解釈で安易に賞賛するような事も、パール判事に対し大変失礼である事を肝に銘じておく必要があると言える。パール判事は日本をこよなく愛して下さっていたそうだしそれは日本人として大変光栄事だが、パール判事はあくまでも公明正大なのである。

いずれにせよ、非常に読み応えのある本である。興味を持たれた方には是非ご一読頂きたいと思う。

ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論

ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論