ネット右翼が日韓併合を肯定するには


小林よしのり著「パール真論」(161ページ)より

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中島(中島岳志氏)はパール判決書から、日露戦争後の日本が「欧米諸国が立てた先例を忠実に守っているようであった」という部分だけを引用し、例によって「日本と欧米は同じ穴の狢」と印象付けるのに利用している。
だがその引用の次の行以降は、こう続くのだ。

「本官は、戦後の平和の形成について責任を担うものが、おそらく戦争の甚大な犠牲と努力によってかちえたと思われる結果をまず確保し、ついでにこれを発展させようと考えるのはまさに当然であると信ずるのである。勝利の結果を無益に消耗することは不自然なことである。このように勝利の結果を無益に消耗し、それによっていやしくも戦争目的がある場合、その戦争目的そのものを水泡帰することは犯罪である。戦争によってなし遂げえたことを保存することは、公人の基本的任務であると考えられる」(判決書(下):249ページ)

日露戦争の目的は、ロシアによる満州・朝鮮占領の阻止だった。

そしてこれに勝った以上、日本が満州・朝鮮を確保し、発展させるのは、「まさに当然」で、「公人の基本的任務」である。

むしろそれを無にすることは「犯罪である」とまでパールは言ったのだ!

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上記を元にパール判事を「植民地主義者」だの「右翼」だの誹謗中傷するのは筋違いである。パール判決書に書かれているのは、小林氏の言葉を借りれば「第二次大戦時の国際社会の常識」である。

「当時は戦争が、ごく当たり前に存在した時代である。戦争は悪だと非難したところで、インドが植民地支配から脱出できるわけではない。そんな現実を突きつけられた時代である。ガンジーチャンドラ・ボースもインド独立の為ならなりふり構わず誰とでも手を組もうとした。『絶対平和主義者』のパールにしても、善悪の価値判断に捕らわれずに戦争を考察する必要があったのだ!このことが戦後の薄らサヨクには絶対に、断固として、到底、死んでもわからないらしいのだ。」(パール真論:151ページ)

上記を読むと、「インフラを整備してやった」「人口を増やしてやった」などの理由で日韓併合を肯定しているネット右翼がみすぼらしく見えてしまう。パール判事及び小林よしのり氏の歴史観は、我々ネット右翼とはまるでスケールが違うのである。

これは私見であるが、インフラ整備や人口増加などの根拠で日韓併合を肯定しているネット右翼も、結局の所「植民地支配」に対する後ろめたさを感じているような気がするのである。だから欧州には無いような「良い面」を強調する事で、免罪符にしようとしているように見えるのだ。はっきり言って、左派に対し「現在の価値観で当時の戦争を語るな」などと批判する資格は、このようなネット右翼には無いように思える。

極論ではあるが、併合(及び以降36年間の日本による統治)によって朝鮮に様々な影響をもたらした事は事実だろうが、それらは朝鮮史の範疇で語られるべきである。「インフラを整備してもらった」と肯定するにせよ、「植民地にされた」と否定するにせよ、当の朝鮮人が判断すれば済む話では無いのか?
もちろん「朝鮮人に委ねたらそれこそ都合の良い様に解釈するだけだろうが」と言われるだろうし、実際現在の韓国で日韓併合を肯定的に論じる自由があるようには私にも到底思えない。ただどのみち日本側でどうこう出来る話では無い。もう少し時間が経てば韓国国内でも冷静に評価出来るようになるかも知れないし、日本の立場としてはそれを期待する程度で十分だろう。


日韓併合を肯定するだけであれば、上記のパール判事の判決文を用いるだけで十分である。勿論そこには「被植民地である朝鮮」の感情など一切考慮に無いし、その必要も無い。それが韓国に対して失礼だと感じるのであれば、生半可に日韓併合を肯定するような真似はしない方が賢明だろう。