パール判事の無罪判決は誰の行為に対してのものか?

20代学生さんからのコメントに対する返答である。↓
http://d.hatena.ne.jp/syachiku1/20130421/1366557747#c

元記事はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/syachiku1/20120922/1348280044

正直この方とは余り議論したく無いのだが、パール判事の名誉に関わるという事らしいので、その点に絞って反論する事にしよう。

>パル判事は、「東京裁判では個人の罪が問われた」と正しく認識していたんじゃないでしょうか。その認識の上に立って、「そういう裁判のやり方はおかしい」と思った。そう思ったからこそ、パル判決書に「ここに述べられた行為はすべて国家の行為である」と書いた、ということなのではありませんか。

20代学生さんの引用された書を読んでいない為か、ただの想像上での物言いにしか見えない。その解釈が正しいかどうかについては、20代学生さんご自身がパール意見書をお読みになって判断されるしか無い。

>私が確認したい事実は、「罪を問うた側の人びとは、外相・広田の選択=日本の選択、としていたのか」です。

何が言いたいのかがようやく見えた。確かに検察側が東京裁判での訴追する内容を「A級戦犯個人による犯罪」にすべく、その為に「全面的共同謀議」を立証しようとしたのは事実である。「罪を問うた人々」=検察なのだから、当然「外相・広田の選択を日本の選択」とは見ずに、共同謀議によってA級戦犯が個人の判断でやった事と言うだろう。パール判事はそれに対し、「ここに述べられた行為はすべて国家の行為である」と反論したのである。

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検察側は、被告(A級戦犯)たちが「全面的共同謀議」によって、日本による大東亜地域の支配を目論んでいたと立証しようとしており、もしこの「全面的共同謀議」が立証された場合、特定の被告がある行為に実際に携わったかどうには関係なく、ただちに有罪とされると主張している。パールはこの主張について次のように述べる。
「本官の見解によれば、ここに述べられた行為はすべて国家の行為である。そして、これらの被告がなしたとされている行為は、すべて政府の機構の運用にあたってなしたとされている行為は、すべて政府の機構の運用にあたってなしたものであって、政府機構の運用の義務と責任は、時局の推移にともなってかれらの負うところとなったのである」
パールは冒頭から、A級戦犯とされる者たちの行為は個人としての行為ではなく、国民から選ばれた政府機構の一員として行ったものであるから、国家の行為であって、この裁判が国家を裁くことになる事を示唆している。(検索の意図がどうあれ)日本国が有罪か無罪かという判決が下されるも同然なのだ。(パール真論:237ページ)

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いずれにせよ、パール判事がご自身の見解として「東京裁判で裁かれる行為が国家の行為」であると書いた事は紛れも無い事実である。20代学生さんは結局の所、

>被告たちの行為は「日本の行為と同義」とは見做されておらず、むしろ彼らは切断処理されています。

上記のように、「個人の犯罪だと検察が主張している」以上の事は言っていない。それをパール判事が明確に否定したのだから、パール判事の見解である事は疑いようは無いし、パール判事の名誉を傷つける事になるとも思えない。

>つまり、東京裁判の内容に異議を唱えるものですよね。だとしたら、「本官の見解によれば、ここに述べられた行為はすべて国家の行為である」という言葉も、東京裁判を批判するために出てきた言葉なんじゃないんですか。

東京裁判を批判する」という私的な事のためにパール判事が意見書を書いた訳では無いなんて、これまで何度も主張している事だ。パール判事は意見書をあくまでも公文書として書いているという前提が理解出来ていないようだ。

>でも、「東京裁判で裁かれたのは国」というのは客観的に正しいと考えているんですよね。だって、「他の方が相手なら、パール意見書を読み直すなりして反論しているでしょうね」とおっしゃってるわけですから。

つくづく言葉尻を取るのが好きな方である。パール意見書(正確にはパール真論)に拠る限り「東京裁判で裁かれたのは国」と言う解釈が正しいと言っているのである(客観的に絶対正しいなんて保証できる訳がない)。20代学生さん(正確には牛村氏?)がこれに対しどのような意見をお持ちなのかは私の知る所では無い。
いずれにせよお望み通り反論させて頂いたのだから、

>「パル判事がやってもいない「解釈」をやったと、6月1日分のブログで発信し続けているという、なんとも恐ろしいことになります」

この意見については取り下げて頂きたいものである(パール判事の解釈では無いと言い張るのであれば、その根拠を示す義務がある)。

・・・久しぶりの長文で疲れた。