南京事件と原爆投下は全く違う

本質主義者、涙目」
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20120217/p1

上記記事のコメント欄に興味深い書き込みがあった。

南京大虐殺を否定するなら原爆問題にも触れなければならなくなりますが、あなた達は中国とアメリカ、両方と喧嘩します?
南京大虐殺アメリカの原爆100万人殺害と相殺するために30万人と言う事になっている事実を知っていますか?
原爆数を15万人などといってるアメリカと国交断絶しますか?

一体このコメンターが何を伝えようと意図しているのかは分からない。ただ気になったのが南京大虐殺を否定するなら原爆問題にも触れなければならなくなります」という一文である。

実際、原爆問題に触れる際、日本も酷い事をした代表例として南京事件が良く使われる印象がある。断言するが、原爆投下と南京事件は全く性質が異なる事件である。被害者数が似ているとか、事実かどうか怪しいかどうかとか以前に、本質的に違うのだ。

まず原爆投下は、パール判事の定義に従えば明確な国家の犯罪行為である。仮にトルーマン米大統領A級戦犯として起訴される機会があれば、パール判事であっても有罪を言い渡した事だろう。原爆投下は、国家の命令によって実行されており、それは明確な「政策」だった.
南京事件はどうか?説によっては原子爆弾による広島・長崎の被害者数に匹敵する数の人間が殺されたというが、国家がその虐殺を指示した訳では無い。効果が余り見られなかったとは言え、松井石根大将は日本軍兵士の不法行為を取り締まる訓令を出している。南京市における日本軍兵士による虐殺・略奪行為は、国家の意思に反する形で行われた事件である。

原爆投下と南京事件の決定的な違いとは何か?簡潔に言えば、「国家の犯罪」であるか否かである。パール判事は、南京事件を事実と認定はしているが、国家の犯罪であるとは認めていない。だからこそ東京裁判において、松井大将を初め「A級戦犯」として起訴された被告全員に無罪を言い渡したのである。予めいっておくが、「国家の犯罪では無いから罪が無い」とか「アメリカに比べればマシ」とかいう話ではない。アメリカは日本に対して原爆投下という酷い事をした。でも日本も中国に対して南京大虐殺という酷い事をした」などと相対的に扱えるものでは無いと言っているのである。

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もし非戦闘員の生命財産の無差別破壊というものが、いまのところ、いまだに戦争において違法であるならば、太平洋戦争においては、この原子爆弾使用の決定が、第一次世界大戦中におけるドイツ皇帝の指令および第二次世界大戦中におけるナチス指導者たちの指令に近似した唯一のものであることを示すだけで、本官の現在の目的のためには十分である。このようなものを現在の被告(日本)の所為には見出しえないのである。(パール判決書下:592ページ)

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